「都心にあって格安で雰囲気のある老人ホームがない」って、当然じゃないか

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20170215-00010010-jisin-soci
フジテレビの須田哲夫アナウンサーが、認知症の母親を入れる施設が見つからなくて困っているという記事が、雑誌「女性自身」に掲載され、ヤフートピックスに上がっていた。
コメントのほとんどすべてが、須田氏に共感する内容ばかりだったが、記事中のこの一文を見て、ツッコミを入れたくなる人はいないのだろうか?

本当にいろいろ回りましたよ。民間の有料老人ホームも行きましたが、都心で僕がすぐに介護に行きやすい立地となると、とんでもない金額がかかる。手ごろな金額で雰囲気のある老人ホームというと、どうしても地方になってしまうんです。

「都心」「手頃な金額」「雰囲気がある」

こんな老人施設があるはずがない。

しかし、須田氏だけを笑うことはできない。

自分の以前の勤務先でも、似たような話があった。

須田氏の母親のように、老人施設に短期入所し、延長を繰り返しながら、特養(特別養護老人ホーム)が空くのを待っている方がいたのだが、その地域は特養の空きが多く、入居には何の問題もないように思えた。

面会に来た家族によると、こういう事情だそうだ。
「近所でないといけない」
「近所というと、この市内という意味ですか?」
「xx(地名)のあたりです。あのへんに特養がいくつもあるでしょう。空かないんだ」
「なぜそこなんですか?毎日通うわけでもないのだから、自宅から少し離れてもいいじゃないですか」
「離れたところは通いにくい」
「ではこちらの有料は?とても近い」
「そこだと高いから嫌だ」(自己負担金の差は月額5万円である)

「歩いていける範囲内の安い終身介護老人ホーム」ばかり探しているのだから、いつまでたっても入れるはずない。

私は、老人ホームが高いとか足らないとかいう話を疑っている。地方へ行けば、すでに老人施設は十分整備されている。安い施設でも、たくさん空きがある。

「老人ホームが足らない」原因は、遠距離だとめんどうくさい、できれば一円でも安い方がいいという家族の我儘である。

「利用料金が高くて払えないから老人ホームに入れない」

という話もよくあるが、間違っている。金がない老人には、生活保護が適用され、老人ホームに入れてもらえる。生活保護世帯を相手にしない老人ホームもあるが、よほど高級な施設だけである。老人の生活保護受給率は高く、「生活保護お断り」では、商売にならない。

むしろ、須田氏の母親のように、金があるからこそ、老人ホームに入れないケースの方が多い。所得や資産が多いと、介護保険医療保険の自己負担金額は高くなる。その場合は、所得資産に応じた金額を支払えばよく、金がなくなったら、生活保護を申請して、それなりの施設に移動すればいいわけだが、自宅の近所の特養が空くのを、自宅や短期入所施設で生活しながら、何年も待っていたりする。これを「待機老人」と呼ぶのだから、待機老人なんてなくなるはずがない。

老人施設を利用するコツは、「場所を選ばない」「利用料金を気にしない」「すぐに入所させる」である。家族は支払いの連帯保証をしなくてよい。連帯保証なしでも入れてくれる施設はたくさんある。