絶対に挨拶を返さない人

今までに会った人の中で、もっとも印象が悪かったのは、医師3年目の後期研修病院で出会った、2年目初期研修医である。

彼は2年目だけれど、その病院で初期研修をしているので、後期研修で配属されたばかりの自分よりは、病院の仕組みを知っている。だから、自分が3年目で相手が2年目でも、能力は大差ない。

医学部入学が遅かったので、年齢が50歳にも達していることは問題じゃない。自分だって40歳だった。

この人は、挨拶をしても何の返事もしなかった。

病院内で出会って、

「おはようございます」

に対して、返事がない。そのまま無反応で通り過ぎる。

こういう対応をされたことは今までなかったので、大いに当惑した。

私とは初対面なので、なぜいきなりこういう対応なのかわからなかったが、そのまま1年が過ぎて、私は配属変更となった。今にして思えば問い詰めればよかったが、当時は医師3年目という、もっとも厳しい時期だったので、そんな余裕もなかったのだ。

ただの同僚だったらそれでもいいのだが、夜間当直当番が同じになったときには困った。

まったく協力してくれないのである。

患者の処置に関して、

「こういうときはどうしたらいいでしょうか?」

と尋ねたら、

「私よりも本を読んで調べた方がいいんじゃないですか?」

という返答をされた。

私に悪意を持っていたと思うが、理由がわからない。

ガチの救急当番を実質1人でやっていたので、このときのことは、長くトラウマになった。

休日に、自分の担当患者の容態急変に関して、簡単な処置を頼んだときにも、電子カルテに主治医がやってこないことの批判を細々と書かれた。要するに悪口である。

死ぬまでこの初期研修医のことは忘れないだろう。