終末期の費用は3ヶ月で160万円

在宅ひとり死のススメ (文春新書)

自宅で看取ってもらった人の試算がここにあるので引用する。

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自宅で亡くなった場合の費用

毎月42万円から52万円かかっている。

自宅だからホテルコスト(家賃)は含まれていない。

それでこの費用である。

自宅の家賃は、住宅購入時に先払いしてあるだけで、無料なわけではない。

上野千鶴子氏は、「終末期は永遠に続くわけではない」と書いているが、終わりのない終末期というのもあるのだ。せいぜい3ヶ月だと思っていても、3年続くこともあり、予想はつかない。

そもそも、いきなり終末期がくるわけではない。

だんだんと生活機能が落ちていって、常時、訪問介護が必要になる。

朝昼夕の食事の介助があるのだから、1日3回の訪問介護は当然必要である。

他に訪問診療や看護も必要になる。

だから、家賃フリーであっても、1ヶ月50万円くらいは当然かかるのだ。

こんな「在宅ひとり死」老人が全国に発生したら、政府財政は持続しないだろう。

費用を節約するために、老人施設を拡充し、大半の老人を施設に入れねばならない。

上野千鶴子氏は、

「政府が在宅を勧めるのはそれが安いからだ」

と根拠もなしに書いてあるが、政府(官僚)はいったん決めた政策を覆すことを嫌う。前例続行がもっとも手間がかからず、先輩のメンツも保て、心地よいのである。

そもそも「住み慣れた自宅で最後まで」という在宅介護、医療のスローガンを私は疑っている。自宅が「住み慣れている」ことは事実だろうが、「住みやすい」とは必ずしも言えない。

上野千鶴子氏のように、金があって、知的機能も健全な人なら、自宅を住みやすく保つことはできるのだが、大半の老人は、金がない上に認知症なのである。

私はずいぶんたくさんの自宅介護老人を見たが、自宅がきちんと手入れされて、整理整頓され、自分も住みたいと思える住宅は、たった1軒しかなかった。

その家には、公務員を定年退職されたばかりで介護専従になっているお嫁さんと息子さんと孫の3人が同居しているのだ。3人のうち2人は有職で、お嫁さんは定年退職直後だから金も十分にある。庭付き一戸建ての家は、新しく、とても広く住みやすそうである。

これだけの条件が整って、ようやく、老人が自宅で快適に老後を過ごせるのである。

もしも独居老人が同じ環境を外部サービスで整えようとしたら、1ヶ月50万円ではとても無理である。