高学力者の進学先が医学部ばかりでよいか?

学力が高い高校生は、すべからく、医学部進学し、医師免許を取るべきである。医師免許があったからといって、必ずしも医師になる必要はないが、免許をとっておくと非常に有利である。

私が、中高生を進路選択を助言する立場にいたら、こう助言する。

とんでもなく学力が低いとか、健康に問題があるとか、逆に、特殊能力が傑出しているとかでない限り、これでほぼ正しい。

私が高校生だった1980年代後半は、少し事情が異なっていた。

高学力者の進学先は、医学部よりも、理工系学科の方が多かった。

しかし、1990年から2020年までの30年間に、高学力者の進学先は、理工系から医学部にシフトしていった。

これは、日本社会の変質を反映している。

1990年の時点では、ハイテク産業が日本のリーディングインダストリーであり、それに付随して、理工系の科学者・技術者の需要は高まるばかりで、減ることはないと思われていた。

だから、成績上位者は誰もが理工系に進学したのだし、科学者・技術者になれば、大外しはないと思っていた。

30年後に答え合わせをしたら、その選択は大外しだったんだよ。

30年間で、産業構造が変化した。

日本の製造業はすべての分野で衰退し、雇用も減った。大学や研究所の研究員ポストも減った。博士号取得者の期待所得も激減している。

医師の所得は増えてはいないが減ってもいない。高位安定している。

医学部進学は相対的に有利になったのである。

高学力者が医学部に吸収されてしまって、研究開発職にならないことは、社会的には問題があると思うのだが、本人の人生にとって有利な選択を考えたら、医学部進学一択である。