佐藤大輔文学の最高傑作『征途』

佐藤大輔 - Wikipedia

が2017年に亡くなってから3年。

ほぼ全作品を読み返したのだけれど、

征途 愛蔵版

が最高傑作であり、他の作品はこれを超えることはできなかった。

小説「征途」は、仮想戦記小説におけるエッセンスをすべて含んでいる。

  1. レイテ沖海戦の改変
  2. ソ連による北海道侵攻
  3. 日本南北分断と統一
  4. 独裁国家による核兵器開発
  5. 戦艦<大和>の空前の大活躍

レイテ沖海戦で、栗田艦隊がレイテ湾の米軍上陸船団に強襲をかけていたらどうなったか?というIFは、ずっと戦記マニアの間で語られてきた話だった。大戦後半における唯一の勝機だったからだ。

佐藤大輔は、この疑問に対して、栗田艦隊が米軍上陸船団を壊滅させることはできるが、米軍の日本侵攻が遅れて、日本がドイツや朝鮮半島のように南北分断されるという苦い回答を出した。

この辺のバランスがすごくいい。

作戦で勝っても、戦争で勝つことはできず、逆に、作戦の勝利が、結果的には国家的損害になることもありうる。