クズカゴがない家

何かの用事で実家に立ち寄ると、イライラする。多分、母の心象風景が実家の状況に投影されているせいだろう。

  1. 部屋の照明が薄暗い。全体照明しかない。デスクライトすらないので、細かい文書が読めない。文句を言うと、「私はこれで困ってない」と強弁する。困ってないのではなくて、文字を読まないだけである。そのくせ、私に家電製品の取説や手紙を読ませるので、私はスマホのライトを使って読まねばならない。
  2. 部屋が片付いていない。モノは、部屋の片隅に積み上げるか、引き出しに押し込むだけである。ボールペン一本でも、母に聞かないと場所がわからない。
  3. 部屋にクズカゴがない。クズカゴを買ってきて設置しても、母が、クズカゴを洗って干して、元の場所に戻さないからである。クズカゴが部屋にあることがほとんどないが、だからといってゴミを放置すると怒り出す。どうしろというのだ。
  4. 何かを書き留めようとしても、適当な紙がない。電話の近くに小さなメモ用紙があるのみで、それより大きな紙がない。何かを書いて説明できない。
  5. エンドレスでテレビをつけていて、かつ、大音響である。テレビが生命維持装置であるかのようだ。テレビを消すのを嫌がるので、ろくに話ができない。

 母が偏執狂のようにクズカゴを洗いたがるのは、自営業をやっていたときからの慣習だ。クズカゴにゴミが少しでも入っていると我慢できないらしく、持っていって、洗ってしまうのである。クズカゴにポリエチレン袋を入れて、袋だけ交換すればいいと思うのだが、袋を使い捨てにするのがもったいないと思っているのだろう。