我が青春のビデオデッキ ベータプロの衝撃

80年代における家庭用VTRについては、VHSとβの規格争いがあったことはよく知られている。

私の家にはVHSとβの両方があった。

父が保守的にパナソニックのVHSを購入したのに対して、自分はすでに劣勢だったβを購入した。ソニーが投入した最高級モデル、SL-HF900(1985年発売)があまりにも魅力的だったからだ。

SONY SL-HF900 ベータデッキ (premium vintage)

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ジョグダイヤル

https://page.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/d406487327

異彩を放つのは、右端のジョグダイヤルだ。これをグリグリと回転させると、回転数比例してコマが動くのだ。写真ではわかりにくいが、外側にはシャトルリングがあって、これを動かすと、再生速度を連続的に変化させることができた。

定速で再生されることが当然だったテレビ画像が、指先の操作で、自由自在に前に後ろに動くことは驚異だったのだ。

それ以前のVTRでも、ボタン操作で特殊再生をすることはできた。しかし、再生速度は固定で段階的に変化するだけだった。再生速度を連続的に変化させることは、ジョグダイヤルシャトルリングをもってようやく可能になった。

これ以来、私はVHSでもβでも、すべてのビデオデッキにジョグダイヤルを求めるようになった。最盛期には同時に6台のビデオデッキを回していたが、すべてジョグダイヤルを持つ機種だった。

SL-HF900の特徴は特殊再生だけではない。この機種の画期的だったことは、βの記録周波数が改変されたことだった。

ハイバンドベータである。

(続く)