大友克洋は、日本マンガ界における重要人物であり、この人を抜かしたら、マンガ史は書けない。
大友の代表作を1冊だけ挙げるならば、「童夢」なのだが、信じられないことに、この名作が絶版になっているらしい。重版は2007年が最後だった。
通信販売市場には古書が大量にあるので、送料込み3000円も払えば手に入るのだが、これだけ値上がりしても重版されないという事実が信じがたい。
悔しいので、「童夢」の批評をしてみたい。
ここに概要は書いてある。
「童夢」のエポックメイキングだった点は、「見えないチカラ」を絵に描いたことだ。
超能力とか念力とかいう概念は昔からあったが、重力と同様の遠隔作用だから絵にできない。
大友克洋は、目に見えない力を、周囲の物体の破壊や歪み、力を受けた人物の反応を描くことで、目に見える形で描くことに成功した。
「壁ズン」と言われる下のコマがそれだ。
「壁ズン」は、多くのフォロワーを産み、すでに日本マンガにおける記号として定着しているので、今の読者がこれを見ても、何が新しいのかわからないだろう。