「幸せの国」ブータンで見えた障害者の過酷 | ワークスタイル | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
「隣の芝生は青く見える」というが、まさにそれ。
脳性麻痺で体が満足に動かないタンディン君、20歳は、親戚からも厄介者と見なされ、老いた母親の世話になってなんとか暮らしている。学校教育はない。職業訓練所に通っているが、所得を得られる見込みはない。
――とても聞きにくい質問で恐縮なのですが、その……順番で言えば、お母様のほうが先にこの世を去ることになってしまいます。そのときは……。
タンディン:お母さんがいなくなったらと思うと……怖い。とても怖いです。だけど、そうやってお母さんに心配をかけてしまうことが申し訳なくって……。
そう言うと、タンディン君は顔を真っ赤にしてこわばらせた。その目からは大粒の涙が流れ出す。隣に座っていた母のトゥッケンさんがたまらず息子の体を引き寄せ、その手で涙を拭った。
トゥッケン:私にもその不安はあります。いまはご飯を作ったり、お湯を沸かしたりということもすべて私がやっていますが、彼にはそんなことが何もできません。ブータンでは国からの支援といったこともないので、私がいなくなったあとは……中学2年生と小学4年生の妹たち、もしくは親戚に頼るしかありません。
タンディン:でも、お母さん。僕だって前よりはいろんなことができるようになったよ。昔は自分でご飯も食べられなかったけど、いまは自分で食べられるようになったし……。
国民幸福度が高くて、「幸せの国」と言われて、王族が日本に親善訪問に来たりしているブータンだが、一人あたりGDPが日本の十分の一では、障害者福祉すら満足にできない。無い袖は振れないということだ。
一人当たりの名目GDP(USドル)の推移(1980~2018年)(ブータン, 日本) ※画像出力ページ - 世界経済のネタ帳