「応仁の乱」でヒットを飛ばした歴史学者の呉座氏が、中世日本における政変にまつわる俗説を逐一検討し、歴史学会における通説と俗説との違いの原因を考察した。
要約すれば、「歴史はおもしろくないことを受け入れよ」ということだ。
人がおもしろいと感じるイベントとは、原因と結果との関係が単純でわかりやすく、登場人物は、自己の利益を求めて合理的に行動するイベントだ。
現実の歴史はそんなものではない。原因と結果は錯綜し、偶然が大きな要因であり、登場人物は利己的でない場合もあるし、勘違いをしていることもある。
応仁の乱を例に取ると、11年も続き、京都を焦土とし、中世的秩序を破壊した大乱なのに、東西軍には決定的な対立理由がない。納得できないので、「応仁記」の作者は、日野富子がおこした将軍継嗣争いだということにしてしまった。