「歴史に」学んではいけない、「歴史を」学べ

「歴史に学ぶくらいならワンピースを」日本史学者・呉座勇一の警告 - withnews(ウィズニュース)

応仁の乱」「陰謀の日本史」など、歴史に関する新書が異例のヒットを続けている歴史学者、呉座勇一のインタビュー。

 「これはかなりまじめな話です。事実、俗説を『歴史的事実』と誤解し、それを根拠に物事を決定して、失敗してしまった例は多い」

 「例えば、太平洋戦争。日本軍が奇襲を多用した背景の一つに、源義経一ノ谷の戦いで見せた(断崖絶壁を馬で駆け下り、敵陣の背後を急襲した)『鵯越の逆落とし』があったと言われます。「『義経は奇襲で平家の大軍に勝った。だからわれわれも、奇襲でアメリカに勝てる!』と思ったわけです」

 現代に残された史料は少なく、いく通りにも解釈が許される。

大衆はその中でもっともおもしろい解釈を選び、そこから「学び」、間違った判断をしてしまうことがある。

「歴史に学ぶ」スタイルはビジネス雑誌に多いのだが、真実性よりもおもしろさを優先した俗説を採用しており、そこから何かを学ぶのは間違っている。

歴史学者が支持する通説は、「もっともおもしろい」のではなくて「もっとも平凡でつまらない」ことが多い。実際、そういうことが大半なのだ。

殺人現場に血のついた刃物をもった男がいたら、通常はその男が犯人である。

これではおもしろくないから、その男は犯人ではない、真犯人は別にいる…という話が、ミステリ小説のストーリーとして採用される。

日常生活を楽しくする物語がほしいのであれば、今まで人類が大量に作ってきた、娯楽小説や漫画やアニメを見れば、それで足りるのである。「ワンピース」や「スラムダンク」で十分なのだ。

歴史を歪曲し、そこから何か真実を学んだ気になってはならない。