私は青春をビデオエアチェックに費やした

シューカツでは、「学生時代にチカラを入れたこと」を略してガクチカと呼ぶらしい。

私の学生時代といっても、「どの学生時代」かということになりますが、概ね38歳までにチカラを入れたことは、エアチェックでした。

これも、解説しないとわからない単語になりつつありますね。

エアチェック - Wikipedia

ラジオファンだったら、放送音声をカセットテープに録音して、ライブラリ化することですが、私はアニメファンだったので、テレビ放送をビデオテープに録画して、ライブラリ化していたのです。後に、メディアは追記型光学ディスクになりましたが、本質は同じです。

昔はオンデマンドも、安いパッケージソフトもなくて、ビデオレンタル店にはメジャータイトルしかありませんでした。私が見たかったTVシリーズのアニメ番組を見たければ、一斉放送を家庭で録画してライブラリを作るしかなかったのです。

今は、録画機材の組み込みハードディスクが大容量化して、ほぼ無限に近い録画時間を使えますが、昔は、テープメディアで、標準モードで2時間、長時間モードでもせいぜい6時間くらいしか録画できなかったのです。また、テープはシーケンシャル記録しかできないから、後から順番を入れ替えたり、削除したりすることもできません。

だから、週1回、30分枠で放映されるタイトルのライブラリを作ろうとすると、テープを頻繁に差し替えないと、同じテープの中に複数タイトルが入ってしまって、見づらいことになります。自分が不在のときに、テープごとにタイトルを分けて留守録をしようとしたら、その数だけビデオデッキが必要になります。

一番、たくさんビデオデッキを持っていたときは、4台使っていました。ビデオデッキが10万円近くしていた時代に、4台もビデオデッキを維持するのは、大変な経済負担になります。昔のビデオデッキはよく壊れたのです。

もちろん、ビデオカセットも高い。90年代だと、2時間あたりのコストが500円でした。1週間に30分番組4タイトルを録画すると、週500円、月2000円かかります。所得がない学生には大変な負担でした。

CMカット*1をやって、無理矢理2時間テープに5タイトル入れたりとかいう荒業もありました。常にビデオデッキの前に張り付いてないといけないので、さすがにこれは長続きしなかった。

そうやって、ビデオデッキとテープをためていくと、こういう部屋ができあがります。

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宮崎勤死刑囚の部屋

今から考えると、録画したタイトルを見返すのはせいぜい1回くらいなんだから、ビデオカセットの差し替えなんかせずに、時間軸順に録画していけばよかったのです。ビデオカセットには、録画した日時と録画タイトルをメモしておけばいい。

時間軸整理とは、野口悠紀雄先生が言うところの「超整理法」ですね。直近に録画したタイトルは見返すが、昔に録画したタイトルは見返さない。カセットごとに押し出しファイリングをやればいい。

「超」整理法―情報検索と発想の新システム (中公新書)

 

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押出ファイリング

押出ファイリングをビデオライブラリに採用したら、ビデオカセットを差し替える手間や、当時は高価で故障しやすかったビデオデッキを同時に4台から5台も維持するコストは不要になり、かつ、ビデオカセットもよく見る順に整理されて、生活の質は上がったと思います。

野口先生の著書「超整理法」が発売されたのは1993年で、その直後から、私は書類の整理に「押出ファイリング」を使っていました。ですから、その時からでも、超整理法をビデオライブラリに応用しておけばよかったのに、エアチェックが不要になる2010年代まで、ビデオライブラリには「超整理法」を応用しなかった。自分はなんて愚かだったんだろう。

*1:コマーシャルが入るごとに、一時停止をしてCMをカットし、テープを節約すること