ハイバンドだ、HQだと姑息なことをしているうちに、βとVHSの双方から、次世代VTRの決定版が出た。
EDβとSVHSである。
どちらも、カセットテープや記録再生系の物理形状はそのままで、下位互換性は保ちながら、テープの磁気特性を変更し、より高周波数まで記録可能にした。
磁気媒体を改良せずに、記録方式をいじるだけでは限界があったのである。
従来型ハイバンドベータやHQ VHSでは、水平解像度が250-270本くらいしかなかったが、メタルテープを採用したEDβでは、水平解像度500本、改良型酸化鉄テープを採用したSVHSでも、水平解像度は400本に達した。
しかし、この規格はオーバースペックだった。
地上波アナログ放送の水平解像度は300本、BSアナログでも350本しかなかったのだから、こんな解像度は意味がなかった。
それでも、ビデオマニアはEDβやSVHSに飛びついた。オーディオマニアと同じで、ビデオマニアは理屈で満足する生き物だからである。
私は安楽死が見えていたEDβには手を出さなかったが、SVHSは大量にデッキを買った。全部で8台くらいは買ったと思う。
SVHS専用テープはやや高かったが、3倍モードでも画質がほとんど低下しないことが、ビデオライブラリ作成には都合がよかった。それまではT120でTVアニメ4話しか入らなかったが、3倍速で360分記録とすると、12話入るのだ。前後のCMをカットしたら13話入るので、TVアニメ1クールがビデオカセット1本に収まるのだ。