2009年に逝去された作家、栗本薫が、1981年にSFマガジンで連載した小説。私は高校生のころに、ハードカバーの単行本で読み、 次の日、熱を出して、学校を休んだ。
未来社会SFの形をとっているが、青春小説である。
主人公「イヴ」を含むすべての人類には、生殖能力がない。
理由は説明されないが、すでに数百年間前から、人は人を産めなくなっていた。
この世界の人類は、人類に生殖能力があったころに採取された凍結精子と卵子とを体外受精させて、人工子宮の中で育てて作られる。過去の映画フィルムを再生しているようなものだ。
この世界でも、人には寿命があり、いずれ死ぬ。子孫はつくれない。
凍結精子と凍結卵子はいずれ枯渇する。人類文明には、すでに終わりが見えている。
この状況で、自分の生涯に、どういう意味があるのかを、イヴは問い続ける。