大学院生の頃(3)

古巣の講座に戻っても、パフォーマンスは上がらなかった。

実験をすると、すぐに疲れるような気がして、時たましか実験できなくなった。通常だと2週間でできる合成プロセスに3ヶ月くらいかけていた。

もちろん、これで卒業できるはずがないので、指導教員に呼び出されて、「なぜこんなに遅いのか」と言われたのだが、答えられない。

大学院2年目の冬には、ラボも下宿も引き払って、自宅に戻った。自宅が居心地がいいわけではないが、生活費を浪費するのが耐えられなかった。大学院に籍は残しておいた。

その頃、睡眠薬を手に入れるため、大学内診療所の精神科に通院していた。担当医は、「そんな重大な決断をするなら、私にまず相談してほしかった」と不満げであったが、「学籍を残したことは正解だ。二度と戻らないにしても、あなたの精神衛生にいいだろう」と言ってくれた。

家に戻った私は、さっそく予備校に入った。医学部に入学するためである。