大学院生の頃(2)

今から考えると、AをやらねばBができない、だからBはやめるべきだという発想は極論であって、Bを形だけでも進めながら、Aをやるべきだと思うのだが、そんな思考の柔軟性はなかった。

すぐに、ラボには行かなくなった。

大学生協で、手当り次第に、物理学や理論化学の本を買い込み、勉強するようになった。ある程度、納得がいくまで、ラボに出る気にはならなかった。

指導教員は心配したのか、自宅に何度も電話はかかってきたが、無視した。再びラボに出たときには9月になっていた。

その後、時たまラボに出るようになったのだが、やっぱり適応できない。ラボでも、研究などせず、好き勝手に本を読んで勉強しているだけなので、メンバーとはまったく噛み合わないのである。

12月ごろには、再びラボに出なくなった。

特に目標も方向性も決めずに、基礎科学書を読んでいるのだから、不安になって当然なのだが、だからどうしたらいいのかわからなかった。

年が明けて、翌年4月に、大学院を退学しようとして、親に許可を求めたら、あわてて、母親が上京してきた。指導教員と面談して、ひとまず、退学は思いとどまり、大学院に残ったらどうかという話になった。

しかし、やっぱりラボではやることがない。

指導教員も困ってしまって、4年生のときにいた講座に戻ってはどうかということになった。理論研究は諦めて、実験科学をやれということなのだ。