八八艦隊物語

八八艦隊物語1 栄光 (C★NOVELS)

架空戦記小説は、90年代に爆発的に流行した。

架空戦記 - Wikipedia

ウォーシミュレーションゲームのノベライズから派生した小説群だ。

前大戦でボロ負けしたことのルサンチマンを発散するのに、この手の小説は最適だった。

ブーム初期から現在まで、架空戦記小説を書き続けている長寿作家、横山信義は、最初の長編シリーズ「八八艦隊物語」において、つぎの仮定を設けた。

もしも、第二次大戦で空母機動部隊が創設されず、第一次大戦当時のように、戦艦を主戦力とする艦隊どうしの決戦で、戦争の勝敗が決せられるとしたら、日本海軍は米海軍に勝利できるのではないか?

 これを言っていたのは、黛治夫元海軍大佐だった。

黛説とは、

米海軍の演習結果から推測すると、日本戦艦の命中率は米戦艦の3倍である。 だから、戦艦戦力は軍縮条約で対米6割で6対10だけれど、実際は18対10くらいの戦力比になる

という、それ自体怪しい話なのだが、まあ、これが正しいとしましょう。

横山信義氏は、シミュレーション小説の形で、黛説に対して、

日本軍の光学照準の命中率が米軍の3倍でも、米軍はより多くの戦艦と主砲を準備すればいいし、射撃速度が速く、かつ、高性能レーダーや電子計算機を使って命中率を改善できる。

と反論した。

小説において、日本海軍は史実よりは善戦するが、結局は、ボロ負けして無条件降伏する。黛説は全面否定されている。

米国とは国力に圧倒的な差があり、技術的にも劣り、戦略的にも拙劣だった日本は、全面戦争をすれば、最後は敗戦するしかない。

しかし、「八八艦隊物語」は、単純な日米線の勝敗問題以外にも、以下の見どころがある。

  1. 夢の八八艦隊が実現して、超弩級戦艦16隻がそろいぶみ
    ワシントン海軍軍縮条約がなくても、八八艦隊計画は日本の経済力では実施不可能だったのだが、陸軍を相対的に縮小させる、計画を後ろ倒しにして時間をかけるなどのツジマジあわせをしている。
  2. 計画倒れで使われなかった兵器が開発運用される
    重雷装艦北上大井が緒戦で大活躍し、さらに二隻が追加される。史実ではヤケクソ特攻兵器だった水雷艇震洋>が、まともな兵器<爆竜>として、水雷艇母艦とセットで運用される。
  3. 紫電改部隊によるエアカバーによって、米軍の空襲を切り抜けた大和以下第二艦隊が、沖縄沖で米戦艦とタイマン勝負