シベリア「7年戦争」

シベリア出兵 近代日本の忘れられた七年戦争 (中公新書)

2018年から2025年までの7年間の国家収入は毎年20億円しかなかった。そのうちの9億円を陸海軍が消費していた。さらに軍事特別会計から7億円が支出された。シベリア出兵以外にはほとんど作戦行動がなかったのだから、軍事費の大半はシベリアで費やされた。

死傷者は軍人だけで3000人にものぼった。ニコライエフスク虐殺など民間人の死傷者は別にいる。

これだけの国費と人命を濫費しておいて、日本が得たものは北樺太の石油採掘権のみだったが、操業数年でソ連の要求により停止させられ、国家財政に寄与することはなかった。

これほど長引いた理由は、以下の三点が原因だった。

  1. 統帥権独立による戦争指導の統一性のなさ
  2. ソ連を国家承認しなかったので交渉相手がなかった
  3. 死者への債務  サンクコストにこだわる

2の「ソ連」を「中国」と言い換えると、日中戦争の経緯と全く同じことになる。

シベリア出兵と日中戦争との違いは、シベリア出兵は辛くも撤収には成功したが、日中戦争は、処理を誤り、対米全面戦争という破局につながったことだ。

シベリア出兵で、全く何の反省もしていなかったのだ。

日本陸軍はその後、ノモンハン事件でも敗北したが、責任者を処分するのみで、装備や戦術の欠点を改めず、そのまま対米戦争に突入して壊滅している。