不安な気分の源泉

件の精神科医が何度も言っていた

「あなたの不安はどこからくるんだろう」

という問題は、20年後の今になって、了解可能な答えが出てきている。

研究なんてやりたくない自分が、研究者養成コースしかない、東京大学にあって、外形的に研究をやらされていたので、気分が不安定になっていたのである。

与えられた作業、仕事だと割り切って、研究をしていれば、気分が安定したかもしれないのだが、当時は、マインドまで科学者になりきらねばならないと、強迫的に思い込んでいた。

しかし、職業科学者のポストが急速に消滅しつつあった90年代後半では、大学院を卒業していたとしても、ポストからアブレてしまって、精神をおかしくしていた可能性が高い。

多分、新設薬科大学教員ぐらいにしかなれなくて、それですら、適応は難しかっただろう。学生にとって、全く役立たずの知識や技術を教え込むような仕事が、自分にできるはずがない。5年生存率1%の悪性疾患の患者に、「必ず治る」とか言わねばならないようなものだからだ。