進学しない方が安全

明日の子供たち (幻冬舎文庫)

児童養護施設をテーマにした長編小説です。

18歳以下の子どもたちだけが入れる施設なので、高校を卒業したら、すぐに出なければなりません。本来は15歳で「卒業」なんだけれど、高校に進学した場合だけさらに入所を続けられる。

施設の高校生たちは、施設を出た後、どうやって暮らしていくかを指導員たちと一緒に真剣に考えます。

指導員たちの主流派は就職を勧めます。登場人物のセリフにありますが、

「何も考えずに就職するならそれでいい。日銭が入ってくるから問題ない。むしろ進学の方がリスクが高い。奨学金は金額が少なくて、なにかトラブルがあっただけで、すぐに家計が破綻する」

という理屈です。これはそれなりに正しい。

反対を押し切って、死別した親がかつて通っていた大学に進学したアッコは、病気で1ヶ月働けなくなり、生活が行き詰まり、学費支払いができなくなって、大学を2年足らずで退学して失踪しました。後で再登場して、たくましく生きていることがわかるが、それは運がいいだけです。

太い親がいないと、私立大学+下宿という組み合わせは、非常にリスクの高い選択なのです。国公立にしたところで、学費はそれほど安くならない。学費免除が通れば別ですが。

資本のない人が、安パイな人生を送りたければ、高卒で就職して、結婚せずに、一人暮らしをするのが一番いい。親から離れていれば、介護負担を押し付けられることもありません。