家族の臨終に立ち会う必要はない

いつ誰が始めたのか知らないが、「臨終に立ち会う」慣習は止めた方がよい。

末期患者がいつ死ぬかなんて予想がつかないので、家族は何週間も交代で泊まり込むことになってしまう。

逆に、老人は、突然、死ぬことがある。この場合は、家族から「死に目に逢えなかった」という理由で医師が責められる。

「臨終に立ち会う」慣習の劣化版が、「家族の目の前で死亡確認する」慣習である。これを「お看取り」と称する訪問診療クリニックがあったが、こんなものは、お看取りでもなんでもない。家族の前で、今死んだかのように装う猿芝居をしているだけなのである。

死亡確認時刻を死亡時刻としてしまえば、家族は何日もベッドサイドに侍ることなく、「死に目に逢えた」ということになる。周囲も家族が満足すれば都合がいい。

しかしながら、「死亡確認時刻」は「死亡時刻」ではないのである。

「死亡したとき」は、死亡確認時刻ではなく、死亡時刻を記入します。

 平成31年度版死亡診断書(死体検案書)記入マニュアル|厚生労働省

つまり、死亡確認以前に死んでいたということが周囲の状況で明らかなときには、その時刻を死亡時刻とすべきであり、「今この時刻を死亡時刻とします」なんてやってはいけないのだ。