トラック運転手が書いた業界論

トラックドライバーにも言わせて(新潮新書)

著者は4トントラックを運転する女性ドライバーである。

とはいえ、通常の意味でいうトラッカーではなくて、金型工場の経営を親から継承せざるをえなくなった若き女性経営者であり、運ぶのは顧客の金型ばかりである。

それでも、貨物輸送の世界は相当つぶさに見てきたので、業界の話を書くことができる。

トラック運転手は何万人もいるのに、いままで、この手の本は今まで一冊もなかった。

過酷な労働という感想しか持てない。

大型トラックは、図体の大きさのために、「止まることが難しい」のである。

小型車が当然のように利用するコンビニやファミレスやコインパーキングを利用できない。いったん走り出すと、目的地まで、ドライバーは休息することが困難だ。

排尿することも困難なので、運転席でペットボトルに排尿していたりする。女性はこの技すら使えないので、女性ドライバーがいないのである。

しかも、予定よりも遅く到着することはもちろん、早く到着することすら許されない。

受け入れ側の都合で、簡単には荷降ろしさせてもらえないからである。

無茶な要求が、トラック運転手の健康を蝕んでいく。

こんなに理不尽なことがまかり通るのは、荷主と比較すると、運送会社は零細であり、交渉力が弱いからである。

政府による強い規制が必要である。

規制で運送コストが上昇すれば、自動運転システムを作らざるをえなくなるだろう。