「死の谷」を渡る

就職してから、大病も怪我も失業もなく、大過なく人生を過ごした幸運な人も、60歳から70歳にかけては、経済的な危機に陥る。

まだ、体は健康であり、遊びたい欲求もあるが、所得が極端に減る。あるいはゼロになる。

80歳以降は、要介護になるか死ぬ可能性が高くなるので、所得がなくなってもいい。生活保護で暮らしても不自由はない。

60歳から70歳までの約10年間を、仮に「死の谷」と名付ける。

死の谷の開始は、早い人は60歳、遅い人でも65歳くらいだ。

死の谷の終了は、健康寿命で測定すると男性72歳だから、余裕をもって75歳としてみる。

最大15年程度は、低所得で暮らす覚悟が必要だ。

公的年金は、私の場合は17万円くらいなので、あと10万円くらいは必要になる。

年間120万円、これが15年続くのだから、1800万円、ざっと2000万円。

この程度を60歳までに貯めることは難しくもあるし、易しくもある。

家族がいなければ、この程度の金はしぜんと貯まる。独身貴族などと浮かれてムダ使いしなければいい。

家族がいる場合は、話が複雑になる。家族が自分のめんどうを見てくれるかどうかは不確定だからだ。子はめんどう見てくれないと思って、「死の谷」を渡る準備をすべきだ。