患者によりそった(迎合した)診療

私の実家の近所の小児科クリニックは、インフル疑いの患者にはすべて迅速検査をして、陽性でないと抗インフル薬は出さない、高熱でも解熱薬のみだそうだ。

3日連続3回も迅速検査されて、鼻奥に綿棒突っ込まれると思って、受診を嫌がって泣く子もいる。その子は3回とも陰性で、結局、解熱薬のみだった。

大衆は感度特異度なんて概念はまったくわからないから、インフル迅速検査を絶対視して、迅速検査のみに従って判断している限り、苦情は来ないだろう。

検査せずにタミフルを処方したりしなかったり、あるいは、検査陰性でもタミフルを処方して具合が悪くなると苦情が来るが、検査陰性で抗インフル薬処方せずに重症化しても、苦情は来ないだろう。

また、「喉が痛い」と言われたらクラリスを処方しておけば、やっぱり苦情は来ない。耐性菌だらけになって、後で、クラリス耐性マイコプラズマ肺炎になって苦しむかもしれないが。

ただし、ここで述べたことは、一般内科外来の経営にとって、些細な問題でしかない。患者の圧倒的多数は、距離と営業時間と診療科だけで医療機関を選んでいる。医師の愛想の良し悪しとか、臨床判断の適格性などは、実はどうでもいい。

ロケーションは変えられないから、営業時間と診療内容で工夫するしかない。できる限り、需要のある曜日と時間帯に、需要の多い医療行為を行うのだ。

診療所経営の教科書【第2版】〈院長が知っておくべき数値と事例〉