以前にいたクリニックで、電子カルテの導入でひっかかっていたことがある。
紙カルテを訪問診療で外に持ち出すと、後で、医事課に回して、診療内容をレセコンに落とさないといけなくて、その往復運動がめんどうくさくてしかたがない。
それで、電子カルテにしようとすると、今度は、「医師が電子カルテを使えない」って問題が発生する。
そのクリニックは、ワンポイントリリーフのバイト医ばかり使っていて、電子カルテのレクチャーを毎回やるわけにもいかなかったからだ。
電子カルテ入力を看護師にやらせようとしたら、看護師にはすでに大量のタスクが割り振られていて、これ以上は無理、訪問する患者数を減らすしかないという意見が出た。
ここの看護師たちは、訪問のスケジューリング、患者やケアマネや施設との連絡と調整、持っていく資材の調達、自動車の運転までやっているのだから、医師のカルテ書きまでめんどうみていられない。
私の意見は、「運転手雇って3人体制にしたらどうか」というものだった。普通自動車の運転手だったら、1日雇っても1万円以下なので、それで訪問件数を4軒も増やせるなら、十分にペイする。
それで浮いた余裕で、看護師が、バイト医師の口述内容を電子カルテに入力すればいい。
ところが、訪問診療に電子カルテを運用しているクリニックで働いてみたら、解決方法は極めて簡単だった。
「事前に事務職が前回の内容を電子カルテにコピペして貼り付けておいて、医師が訪問先で修正する。ワンポイントのバイトは雇わない」
これだけである。あるいは、
「訪問先では過去の診療内容を見るだけにして、簡単に紙にメモしておいて、戻ってからまとめて医師が電子カルテ入力をする。ワンポイントのバイトは雇わない」
これでもよい。
この程度の問題で、なぜあれだけ甲論乙駁していたのかが不思議だ。
競合しない遠方のクリニックに、いくらか金を払って、電子カルテ運用の研修のために、人を出せばよかったではないか。
ワンポイントのバイト医に、常時頼らねば、業務が回らないような労務管理もおかしかった。