一度も挨拶を返さなかった謎の50代研修医

研修病院で出会った50代のK研修医は異様だった。

年齢が高いことではない。それを言い出したら自分だって40歳だった。

Kは、病院内のどこで会っても、挨拶を絶対に自分に返さなかったのだ。

仕事上必要な会話はする。しかし、挨拶は一切無視する。

かれこれ9ヶ月ぐらい一緒にいて、これだけスカした対応をされたのは始めてだったが、問い詰める気にもなれなくて、異動によりそのまま別れた。

何かがあって仲が悪くなったのではない。出会った瞬間から、自分を無視し始めたのだ。

Kは自分を嫌っていた。それはかまわないのだが、夜間救急当直を一緒にやったときは、最悪だった。私が3年目でKが2年目だったから、自分がリーダーシップ取らねばならなかったが、よくわからなくてオロオロするわけである。救急外来の経験が長いナースに教えられつつ、なんとかこなした。

Kは、その側で、「そこは違うだろ」「それはおかしい」とかツッコミ入れるばかりで、手伝おうとはしなかった。

40年生きてきて、これほど明白な悪意にさらされたことは始めての体験で、ずいぶんと戸惑った。

Kがまだ生きていても、再会するのはまっぴらゴメンである。ネット上で名前を見ることすら嫌だ。