電話するふりして説教

3年目の後期研修医だったので、いきなり患者をもつことはなくて、半年間だけ、指導医がついた。病院の仕組みを知らねば何もできないからだ。

指導医は半年後に病院を退職した。開業するらしかった。

退職間際に、医局の中で、どこかに長々と電話をかけている姿があって、その電話を自分は机を隔てて聞いていた。

中身は自分に関する話で、いつまでたっても自立しないだの、このまま受け持たせて大丈夫かとかいう、批判めいた話をどこかとしていた。

あのときは病院長と話をしていたのだと思ったが、今になって思えば、電話するふりをして、自分に説教をカマしていたような気がする。自分が近くにいるのに、第三者に批判的な話をするのはおかしいからだ。

なぜ、直接話をしてくれなかったのかを、今も疑問に思っている。毎日、普通に話はしていたからだ。