かつて、合成化学のラボにいたころ、週1回のペースで、卒業研究生や院生が、自分の研究の進捗状況を報告する会合を持っていた。
自分は他人の研究テーマなど何の興味もなかったので、発表は聞かず、自分の研究に必要な資料を読んでいた。いわゆる内職である。
先輩の院生は、当然、怒った。
「きみ、態度悪いよ。聞きたくないなら、ゼミに出なくていい」
まったくそのとおりだと思ったので、ゼミには出なくなった。
論文の抄読会も時間の無駄だと思ったので、無視してさっさと帰った。
いくらでも読むべき資料があり、やるべき実験があるのに、どうして関係のない研究の話を聞かねばならないのか全くわからない。
今でも、自分の判断は正しかったと思う。
ラボのメンバーが持っている研究テーマは、相互には何の関係もなくて、研究報告会や論文抄読会は、仲間意識を醸成する以上の意味はなかった。他人の研究に興味があるふりをして、時間を無駄にしていた他の学生たちの気が知れない。そんな時間があったら、自分の研究を進めるべきだし、それもかったるいなら、自宅で寝ていた方がよほどマシである。