患者に安易に病名を告げてはならない

 

患者には、特定の病名に関してこだわりがあって、病名を告げると、意思疎通が困難になり、治療できなくなることがある。

ある地方では、「肺炎」が死病と思われていて、患者に言うと怯えさせるだけだから、担当医は「気管支炎」と言い換えていた。

ある患者は個人的に「パーキンソン病」を激しく嫌悪していたので、病名を告げると抵抗し、治療薬を飲まなくなった。症状は悪化した。

「糖尿病」という言葉を嫌っている患者は、「私は糖尿病ではなくて、血糖値が高いだけです」と言っていた。

病歴や検査で確定病名がつけられる場合の方が少なくて、「なんとなくこれじゃないか」という推定の下で治療することが多い。

この状況を正直に患者に話すと、理解されない。

大半の患者は、複数の可能性とか、今後の見通しというような話を理解できない。

単純に「自分はXX病だから、この治療が行なわれている」という話に頭の中で変換してしまう。