死亡時刻に関する矛盾

なお、死亡確認時刻ではなく死亡時刻を記入することが原則ですが、救急搬送中の死亡に限り医療機関において行った死亡確認時刻を記入できます。その場合、「時分」の余白に「(確認)」と記入します。

 https://www.mhlw.go.jp/toukei/manual/dl/manual_h30.pdf

死亡時刻とは、家族の前で、医師が聴診器とペンライトを使って、死亡を宣告して、その時刻が死亡時刻だと思われているが、生物学的な死はもっと前である。厚生労働省死亡診断書記入マニュアルによると、死亡時刻は生物学的な死の時刻である。

死亡確認時には、すでに患者は死んでいる。死亡確認時刻は死亡時刻ではない。

では、死亡時刻はどうやって決定するのか?周囲の人の証言や病状や死体診察の結果をもって決定する。死体診察が16時でも、状況から考えて、14時が死亡時刻だと決定していいのである。

医師が死亡にリアルタイムで立ち会えば、死亡確認時刻が死亡時刻となる。

私はこの理屈に従って、お看取りを任された患者の死亡を14時に確認し、カルテにその時刻を書いた。

15時ごろ、家族が到着したので、

「14時に亡くなりました」

と告げた。

これが、後に大問題になった。指導医にこっぴどく怒られたのだが、一体何が問題なのかは、その当時はよくわからなかった。

どうやら、ある地域、ある年代では、家族は「近親の死に目に遭う」ことが重要だと考えているらしくて、自分たちが来る前に死亡してしまうことは、あってはならない。

だから、家族が来ると、医師が出てきて、遺体に、再度、死亡確認をして、「いま亡くなりました」と猿芝居をやるのである。死亡診断書との矛盾はどうでもいい。

しかし、この慣習は地域によって全く違う。かけつけてきたときに、すでに死んでいて、死亡診断書が作成されていて、明らかに死に目に逢えなかったとしても、特に問題にならない場合も多い。