傷や手術創の縫合をするには、糸がついてる湾曲針を使います。
直線的な縫い針と違って、縫合針は曲がっているので、針を後ろから押し出すことはできません。手でつかんでも滑ります。
だから、19世紀に考案された器具「持針器」で針をつかんで、運針をします。
これも、すでにあるものを見ればどうということがない器具で、「コロンブスの卵」的な存在ですが、なければ縫合など無理。
ところが、医者マンガの金字塔、「ブラックジャック」には、一度として持針器が描かれたことがありません。
そもそも、ブラックジャックの手術のカットは、メスで切るばかりで、縫合するカットがほとんどありません。たまに縫合することがありますが、針は手持ちだったり、先の尖ったピンセットでつまんでいたりして、上記のへガールもマチューも使ったことがない。
大阪大学でインターンをしていた手塚治虫が、持針器を見たことがないはずがないのです。自分で縫合までできるかどうかはともかく、こういう器具を知らないはずがない。
また、ブラックジャックが連載開始された1970年ごろでしたら、いくらでも図解入りの手術テキストはあっただろうし、資料として手術器具のカタログも手に入ったでしょう。
「天才外科医」という設定なのに、使う器具がおかしいというのは、致命的な欠点ではないかと思う。
呼吸管理に使っている器具もそうとうおかしいけどね。